『ジョウイ。ナナミ。

置いていかないで、置いていかないで。

僕をひとりにしないで』




僕は、二人に置いていかれるのが怖いんだ。

ずっと幼い頃、ルードの森で迷子になった時と変わらない。

ナナミもジョウイも、僕が先に歩いているようなことを言うけれど。
違う、逆だ。
僕はいつだって君たちの後ろを追いかけていたんだ。
置いていかれるんじゃないかって怯えながら。

そうして確かにあの時、ジョウイに置いていかれ、ナナミに置いていかれた。

だから、また置いていかれる。
そんな風に心のどこかで思っていた。そんなはずはないと打ち消しながら尚。
誤魔化しだ。僕は本当はずっと怖かった。
やっと三人一緒になれたねと笑い、これからはずっと一緒だよと言うナナミとジョウイを見て、そう言いながらも誰かが一歩先を行ってしまいやしないかと。
だから、僕は三人でいられるように努めたんだ。二人がその先のことを考えられないようにしたかった。
でも、それすらも誤魔化しだった。僕だってその先を考えたくなかったのだから。

なんて不自然で、後ろ向きな発想だ。自分らしくないと思うと同時に、嫌なくらいに自分らしいとも思う。
こんなことは長続きしない。ようやくジョウイが自然に笑えるようになってきた今。彼らが別の考えに至る日は近い。
いつまでこの平穏な状態が続くのだろう、と。

ナナミの望みはそれこそ終始一貫して3人でいることだったから心配はいらないかもしれない。
ジョウイも、今はまだ考えていないだろう。それこそようやく自然に笑うことのできるようになった彼には。
けれど、彼はいつか動くのだろうと心のどこかで思っていた。きっと、僕が想像していなかったやり方でひとりで勝手に。

約束の地での、ハイランド皇王と同盟軍リーダーとしての最後の戦いでも。
ジョウイは最初から僕に勝たせる気だった。
自分を打たせて、僕を紋章の呪いから守ろうとした。

あのとき、僕はなんて思ったんだっけか。

ジョウイを倒すなんて僕にはできない?それも感じた。
でも、それ以上の強い感情を僕は抱いた。
目の前が真っ赤になるような感覚を覚えている。
彼の決意を知ったとき。




―――許さない。




そう。
僕はそんなことは許さないと思った。

ひとりで全部決めるなんて許さないって思ったんだ。
僕のことは、僕が決めると。

時間が選択の猶予を与えなかった?
それだって選ばなかったわけではない。
なにも選ぶことができなかったのなら、それだって僕自身が決めたことだ。
たとえ納得がいかなくても。

そうだ。

僕は、僕自身が決めたことを行うんだ。
例えば、ナナミの願いを叶えること。ジョウイの願いを叶えること。それらは僕にとって、とても大事なことだ。大切な人たちの望みなのだから叶えたい。

けれど、僕にも譲れないことがある。




「―――あ、」




身体に満ちていた冷たい感覚が、ドッと堰を切ったように溢れだした。




気付かなかった。でも本当はわかっていた、気付きたくなかっただけ。




僕は、ジョウイとナナミと一緒にいたかった。
でもそれは僕にとって一番大事なことじゃない。

2人の笑顔を守りたい。
心から、そう思う。
でも、それだって僕にとって一番大事なことじゃなかった。

僕には。
たとえジョウイとナナミと一緒にいられなくなったとしても、2人の笑顔が守れなかったとしても、成し遂げたいことがある。

58 ≪     ≫ 60