それはまるで、じりじりと獲物を狙う猫のように。
「・・・・・・」
部屋の片隅で目を伏せていたその人物は、ふと顔を上げる。
ほんの僅か、例えるなら木の葉が着地するくらいの気配。
ばたばたと人の行きかう場所なので、そんなものすぐに埋もれるはずだ。
しかしそれはちょっと違った。
まるで目標はバッチリしっかりアンタだよと言わんばかりの視線。
「・・・?」
首をめぐらすが、何もない。
内心で引っかかるものを覚えながらも、クライブは目を閉じた。
部屋の片隅、遠目から見たらゴミ袋っぽかった。
「くそっ、確かめなきゃ気が済まない!!」
廊下を歩きながら、悔しそうに拳を握るのは軍主。
言わずもがな視線の犯人はコイツである。
組合正規のガンナーに姿を悟らせないその武道、完璧に使い道が間違っている。
「あーもう!!」
うがーと頭を抱えて、通りすがりの市民がびくっと震えた。
それに構わずバンリは足を慣らして、再びぐっと拳を握った。
その表情は決意が溢れんばかり。
軍師が見たら「もっと別の所に使え!!」とハリセンばしばしコースまっしぐらだ。
だがそんなの俺様軍主の知ったことではなく。
ハント開始。
「あのさ、邪魔なんだけど」
「・・・・・」
石版の前で、ルックはちらりと右下を見る。
その表情はいつもの心底嫌そうなものでなく、どこか怒るに怒れない複雑な顔だ。
視線の相手は、膝の間に顔を埋めて体育座りをしている。
膝を抱えた腕がなんともいえない切なさを醸し出していた。
「ちょっと・・・ティル」
「・・・・」
トランの英雄、毎度居座り中。
だがその肩が震え、一見しただけでずーんと背景が暗いのが分かる。
しかもここは大広間。
ただでさえ目立つのに、体育座りでヘコんでいるティルに誰もがちらちらと視線を送った。
だがその誰もが原因を知っている。
もちろんルックも。
石版に立て掛けられた棍がカランと落ちて、ますます哀愁が漂った。
「棍、落ちたよ」
「・・・うん」
「拾いなよ」
「・・・うん」
ティルは顔を上げず、右手が床をぱたぱたと彷徨った。
ちなみに棍が落ちたのは左側、ルックとティルの間である。
音で判断できるだろうに・・・。
そこまでかと息を吐いて、ルックは棍を拾い、そのまま持ち主をゴツンと叩いた。
右手がぱたりと落ちた。
反応無し。
「あのさ本当!いじけるなら墓地に行きなよ!バンリだって気まぐれだろ!?」
「墓地はイヤ・・・」
「あーもー・・・本当、バカ・・・キングオブバカ」
「・・・・・」
ティル、ツッコミ無し。
とんとんと人の棍で肩を叩いて、ルックはげっそりと息を吐いた。
そして運が良いのか悪いのか酒場方面から歩いてくる人影。
「ね、結構和んだでしょ?今度コボルトパイで投げ合いしようなっ」
「・・・ああ」
どんな会話だ。
しかも了解してるし。
ルックを含む全員が心もち身を引いて、そして視線を石版横へと流した。
正確には、石版の右下。
そして気付いた軍主が、首を傾げてゆっくりと歩いてくる。
その後ろには黒ずきん。
もといクライブが相変わらずの無表情でバンリの後ろを歩いていた。
「よ、相変わらず暇そうで何より。そこでカビ生えてそうなのってティル?」
「あー・・・・」
ちらりと右下に目をやって、ルックは複雑な顔で肯定する。
ティルは沈黙を通したまま顔を上げない。
会話すら入らない彼をさすがに訝しく思ったのか、バンリは膝を折った。
ティルの真ん前にかがみ込んでその頭をぺしぺし叩く。
その様子を眺めていたルックは、同じく佇んでいるクライブと目線が合った。
律儀にもバンリを待っているらしい。
お互い無表情で止まり、どちらともなく目線を逸らした。
自然、ふたりは同じ場所、石版の右下を見るようで。
「ティールー。ティルティル。どうした、具合悪いのですかー」
「・・・うん・・・もうダメかも」
「いや、ダメって人ん家の大広間でアンタ。しかも何でルックが棍持ってんのさ」
矛先をルックに向けて、バンリは口パクで「どうしたんだコレ」と訴える。
うっ、と彼は止まった。
当の本人達を目の前に「原因はアンタだアンタ」とはさすがに言いづらかった。
そう原因は。
「バンリ、最近、一緒にいてくれないよね」
「へ?」
「ついでに言うと、そいつと一緒にいるよね」
「そいつ?」
ティルに顔を近づけて、バンリが訝しげに眉を寄せた。
ゆっくりと顔を上げてトランの英雄は据わった目を後方へ。
バンリとルックがそれを追い、ひとりの男へ行き着いた。
視線を受けた男が心もち瞬いた。
「クライブがどうしたの」
「・・・・」
真正面から覗き込まれて、ティルは口を開こうとしてまた閉じた。
その代わり目で訴えてみる。
「な、なに」
「・・・・」
「あ。なんでクライブと一緒にいるのかって?」
伝わるもんだ。
「いや、ほら。ちょっと興味が、ね」
「興味・・・」
ぽつりと呟くティルに気付かず、バンリは照れくさそうに笑った。
いつものニヤリじゃない種類にルックが目を見開く。
突如ゴアッと闇が膨れ上がった。
「うあぁッ!?」
「・・・ソウル君がイキのいい金髪を求めている・・・・」
真顔。
どちらかと言えばイキのよくない金髪は、身の危険を感じて顔を強張らせた。
先程の無気力はどこへやら、ティルはすらりと音も無く立ち上がる。
右手を突き出して、クククと。
大広間にいた人間全てが顔を引きつらせて固まり、黒い霧がぶあっと吹き荒れる。
魔王降臨。
「このアホー!!!」
ガコンッ!
魔王降臨はひとりの勇者、もといひとりのルックによって免れた。
腐ってもSレンジ。
常日頃から軍主共に巻き込まれているせいで彼も肉弾戦仕様になりつつあった。
魔王は完全に不意をつかれ、ばったりと倒れた。
世界平和の完成である。
「ッ、ナイス、ルック!愛してる!!」
「凄いな」
バンリが冷や汗を垂らしながらも拳を握り、クライブもぼそりと呟いた。
かつての仲間に凄いと言わしめたルックは棍を構えたまま肩で息をしている。
腐ってもSレンジ、しかも他人の武器での攻撃だ。
ぜぇぜぇと荒い息のルックは、ぐったりと前髪をかきあげて軍主に向き直る。
もう勘弁してくれと顔にハッキリスッパリ書かれていた。
当の本人を前に言いづらい?
んなもんクソ喰らえだ。
「こいつは元々おかしいけどね。原因は十中十アンタがこいつに構ってないからだよ」
「はい?」
「最近そこの黒いのと一緒にいるから!ってか分かれよそのくらい!!」
地面に棍を打ちつけたルック、発狂一歩手前。
うぉ、と身を仰け反らせたバンリは倒れているバンダナと黒ずきんを交互に眺める。
クライブもバンリを見下ろして、僅かに首を傾げた。
「いや、ってか僕が誰といようと別にそんな。な、クライブ」
「ああ」
確かに自由だ。
そんなんルックだって分かっている。
だが分かってない魔王がそこに一名倒れている。
こいつを人類の普通の型に当てはめるほうが不可能、いやむしろ人類対して失礼だ。
そう暗に込めて睨むとバンリもティルを見下ろし、アハハと手を振った。
「なに、僕って実はモテモテ?」
「・・・・」
命懸かってますけどね。
アホ言うなと切り捨てられない自分を心底恨めしく思うルックだった。
そしてバンリは自分で言ってその恐ろしさにちょっと泣きそうになった。
渦中の人クライブは大広間をとてとて歩いていたムササビを見つめていた。
三者三様、しかも噛み合っていない微妙な空気だ。
そして相変わらずティルは倒れている。
ルックの一撃、クリティカルヒットだった模様。
そんな微妙空間にひとりの放蕩息子が気付いた。
「よー、なに固まってんの?ってか目立つぞお前ら。今更だけど」
「シーナ」
ポケットに手を突っ込んでぶらぶら歩いてくる。
シーナは突っ伏しているバンダナを見下ろして彼らと同じように固まった。
瞬いて、指を差して、顔を引きつらせてバンリを振り返る。
バンリは無言でルックを指した。
棍を持ったルックにシーナが小さくマジっすかと呟いて。
そしてクライブは明後日の方向を見ていた。
やはり噛み合わない。
そして全員が息を呑んだ。
右手が、ぴくりと。
「シーナ!!」
「えっなに」
びくっと反応したシーナは視界の端、ゆらりと起き上がる影を捕らえた。
魔王復活。
効果音はゴゴゴである。
シーナはぴしりと固まり、ティルがその顔をゆっくりと上げて。
放蕩息子は唐突に突き飛ばされた。
「うおぁッ!?」
「受け取れティル!イキのいい金髪だ!!」
魔王が前なら後ろは鬼だった。
石版から打撃音が、ついでにルックの怒声も響いた。
シーナがティルに寄り掛かる形でギャーと叫んで大混乱。
その時すでにバンリはクライブの腕を引っつかんで駆け出していた。
ティルが放蕩息子などアウトオブ眼中ですーっと視線を移し、バンリが振り返って。
「クライブはダメだからな!!」
「・・・・」
爆弾投下。
そしてスタコラ逃げた。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
残された三名、うち一名は無表情の魔王。
大広間は沈黙に包まれた。
ややあって、ぽつりと。
「黒い袋は燃えるゴミ」
「いやワケ分かりませんて!!」
シーナ涙目。
隣ではルックが石版を傷つけられたとして無言で素振りをしていた。
大混乱は終わらない。
そして後日のレストラン。
その一角で軍主と放蕩息子が向かい合ってお茶を啜っていた。
「でさ・・・なんでクライブ?」
吐き出した息はげっそりだ。
今のシーナには背後にバッチリしっかり死神が憑いている。
当の本人、バンリは無言でコトリとお茶を置いた。
真正面から対峙した、その目線にシーナが圧倒される。
彼は無意識にごくりと喉を鳴らした。
そして相手の口が開く。
「クライブのさ、マント剥ぎ取りたいんだよね」
沈黙。
無言。
・・・・。
なんスかそれ。
「・・・お前はさ、なに変な野望持ってんの」
そしてその為に俺は魔王を見たのか。
シーナの干乾びた精神をよそに、バンリは神妙な顔でお茶をじっと見つめた。
両手で湯のみ(ちなみに緑茶)を包んで、そのまま呟く。
「シーナ。シーナはクライブの顔を見たことある?」
「顔出てんじゃん。覆面してるワケでもなし、見るもなにも・・・」
そう言ってハタと気付いた。
よくよく考えれば、クライブと聞いて真っ先に思い出すのは顔ではなく。
「・・・黒ずきん?」
「だろ!?ぶっちゃけシーナ、クライブの髪の色分かる!?パッと出る!?」
「で、でない」
「城内アンケート26人に聞きました!クライブと言えば!?」
「なにアホやってんだよ。しかも数ハンパだぞ」
「黙って聞け!1位・黒ずきん、2位・銃持ってる、3位・ムササビと会話!!」
「ちょっと待て、最後のなに」
「つまりクライブ自身の、生身の特徴がないんだよ!」
生身言うなよ。
そう突っ込みながらも、放蕩息子はその迫力に身を仰け反らせた。
バンリはぎりと拳を握って、そのまま緑茶を一気に仰ぐ。
だんっと湯のみを叩きつけたその表情はふてくされていた。
「あのな、シーナ。僕が見た感じでは、クライブはかなりの男前ですよ」
「え、そうなの?ヤベェな」
「何がヤバイかはあえて突っ込まない。勿体ないと思うだろ?貴重人種だぞ」
「なにが?俺的にはそのまま伏せといて欲しいけど」
「俺的よりも僕的のが優先されるから諦めろ」
「とりあえずそれを理解できる俺を褒めろ」
「・・・・」
「・・・・」
すみませーん、お茶おかわり下さーい。
あ、俺もー。
「で、なにが貴重?」
「クライブが。年上で男前で無口、しかもさり気に面倒見が良かった」
「マジっすか」
「マジっすよ。同じようなヤツが他にいます?」
「・・・・」
「いないでしょ?あー、もう襲撃しようかなぁ」
足をバタつかせる軍主をよそに、シーナは頬杖をついて考えた。
年上で男前で無口、そして面倒見。
他に誰かいたような。
注ぎ足されたお茶を飲んでまったりしてるバンリに目をやって、あ、と気付いた。
いるじゃん。
「シュウ軍師」
「はい?」
「だから、年上で男前で、だろ。条件オールクリアじゃねぇか」
あぁスッキリとシーナはお茶に口付けた。
ふと軍主を見ると、彼は思いっきり嫌そうな視線をシーナに向けていた。
湯のみを掴んだ手が空中で止まっている。
「なんだよ」
「ねぇシーナさん。ここで僕はアナタを張り倒すべき?チャレンジャー?」
「待て待て。なんで張り倒されなきゃなんねーんだ」
真顔で突き進むバンリに、シーナは顔を引きつらせて身を仰け反らせる。
とりあえず手に持ってる湯のみを置かせた。
軍主の顔には、心底理解できぬと大きく書かれている。
「なんでそこでシュウ?確かに年上で男前だけど、クリアそこまでじゃん」
「無口で面倒見良いんじゃねぇの?ってかなんで違うんだよ」
「ねぇシーナ。やっぱり張り倒して」
「待てっつの」
すいませーん、シーナにぶっ掛ける為にお茶おかわりー。
アホか!あ、無視していいから!!
「なぁシーナ。あれのどこが無口で面倒見が良いのですか」
「なんだよ、違うの?」
「全然ちゃうわ。無口?くどくど説教、黙ったと思ったらハリセンか拳が頭上から」
「いや、それは」
「面倒見が良い?あれは合理主義だから厄介事切り捨てだろ?どこがだよ一体」
「・・・・」
「ワケ分からん。ワケ分からんぞ、なんだその認識っぷり」
「・・・なぁ、それってさ」
「なに」
ぶすっと頬杖をついたまま、軍主は目線を上げる。
シーナはただ見返して、ややあって視線を泳がせた。
ちょっとした沈黙。
「なんだよ、シーナ」
「いや、何でもねー」
肩を竦めて、シーナはお茶に口付けた。
これ以上言うと本気で張り倒されそうだったので。
代わりにしみじみ思ってやろう。
「(愛されてるよなぁ)」
口に出したらちゃぶ台返しだ。
「ってシュウじゃなくて。僕の目下の興味はクライブさんですよ」
「お前、そういう事言うから・・・あれが」
「ん?」
「いや別に・・・あー。じゃあ早く」
「早く?」
「・・・・」
興味失ってくれ、とは言えない。
でも最終的にはそうなってもらわないと魔王もとい死神が降臨してしまう。
どうしたもんか板挟み。
「早くー・・・あー、早く、マントだかフードだか剥ぎ取ってくれ」
「頑張る」
神妙に頷いて、ふたりは同時にお茶を啜った。
ほっと一息ついた所でシーナがまた、ふと気付いた。
「風呂ん時って、あー・・・なんでもない」
「頭だけフードだから。実は取り外し可能?チャック付き?」
言ってから気付く放蕩息子。
風呂場ならと思ったが、クライブのフードだけ入浴は誰もが黙認している。
奇人変人揃いなので市民も兵士も慣れたもんだ。
だが・・・。
ちらりとシーナは目線を上げる。
目の前にいるのはそんな奴等を束ねる、言わば親玉。
・・・実力行使とか、しねぇの?
そこまでお気に入りなのかと反芻して、さーっと血の気が引いたシーナだった。
背後にゃ死神・俺ピンチ。
すまん、と心の中で謝罪した。
「風呂場で実力行使すれば?お前ならできそうな気がする」
バンリかクライブか、はたまた両方に謝罪。
そんなシーナの健気な胸中をよそに、軍主はお茶をフーと吹きながら一言。
「もうやった」
「やるなよ!!」
「どっちだよ」
「あ、いや」
ヘタレだった。
「あー・・・失敗したのか?」
「なんと言いますか。僕はね、無口キャラの真髄を垣間見た気がしましたよ」
「キャラ言うなよ」
ことりと湯のみを置いて、バンリは両手で包んだそれをじっと見つめた。
思い出しているのか、真顔に少しの悔しさが滲み出ている。
先程の健気さはどこへやら、シーナはちょっと身を乗り出した。
この軍主が勝てないとはどんだけの黒ずきんだ一体。
「風呂誘うだろ。あのフードは予想範囲内だろ。剥ぎ取るじゃん、人として」
「人としてってお前」
「暖まってるから油断してんのかと思って。背後から狙ったのに腕捕られた」
「へー」
「そっからですよ、強いのは」
「放り投げられたのか?」
「いや」
手元の湯のみだけを見て、淡々と喋る軍主。
いったん切った言葉の次をシーナは待った。
クライブ、もとい無口キャラの強さとは。
目線を上げて、バンリは真正面からシーナを、真顔で捕らえた。
「凝視プラス沈黙」
「はい?」
「シーナ分かる!?あの居たたまれなさが!無言で訴えるんですよアレ!?」
「はぁ」
「・・・無口な奴ってさ、よく目線とか雰囲気で語るじゃん。逸らさないんだよね」
「あー」
「至近距離で凝視されてみ?もうゴメンナサイ許して下さいとしか言いようが」
「泣くなよ・・・」
途中から突っ伏した彼に、シーナは憐れみを込めて手刀をかました。
湯のみを片手に掴んだバンリは酔っ払いのようである。
むくりと起き上がり、勢いでお茶を煽った。
その表情には決意が溢れんばかりだ。
「なので僕は特訓としてハンフリーの前で正座しようかと」
「迷惑だろ」
もう一度、今度は正式なツッコミを。
「・・・ま、そんな感じだった」
石版前、シーナは契約を交わした魔王にそう説明した。
相変わらずの表情で立っているルックの横、ティルは腕を組んで目を伏せていた。
何も言わない魔王の代わり、ルックが僅かに首を傾げる。
「あれって年上好き?」
「いや、普通じゃねぇの。周りに年上が多いから自然にそうなるとか」
「なるほど」
「俺らは年上っていうより同年代って感じだろ」
「まあね」
頷き合う放蕩息子と風使いをよそに、彼はやはり目を伏せたまま。
会話の途切れたふたりは揃ってティルに目線を投げた。
ややあって、伏していた目がゆっくり開く。
表情は真顔だった。
「クライブ襲うのと無口になるの、どっちが」
「「無口で」」
声が綺麗に重なった。
こうしてふたりの小さい努力により、クライブは知らぬ間に死神降臨を免れた。
シーナとルックは無言で目線を合わせる。
アイコンタクト。
「(バンリの反応、具合悪いか企んでるかのどっちかだと思うけど)」
「(まぁ、それでも)」
つかの間の平和があるのなら!!
ふたりは背後でガッと拳を握り、魔王封印を心に誓った。
そして彼らの予想通り。
バンリがティルの手を引っ張って医務室に駆け込むのは二日後のことである。
「ホウアン助けて!二日前からティル、沈黙ステータス全然治らないよ!!」
「えっ、ナナミさんの料理ですか!?」
「即答ですか」
「・・・・」
失礼な医師である。
この二日間、バンリはつきっきりでティルの出方を確かめていたらしい。
何はともあれ、トランの英雄ミッションコンプリート。
クライブのマント剥ぎ取りはもうちょっと先のお話。
e n d
「フリー小説」とあったので持って帰ってしまいました・・・!
2主が愛されまくってます!それもどこか空回り気味の愛(笑)みんなみんな愛しすぎます!
誰よりも活躍しているSレンジの(強調)魔法使い、報われない軍師、愛と怒りの方向性がどこかズレた坊ちゃん、超常識人(のように思える)の放蕩息子、銃より眼が武器らしい無口のガンナー。そしてわが道を行く軍主。
どうしてってくらいにワクワクします!嬉しすぎます、楽しすぎます。テンポのよい言葉の応酬、話の進み方はただただため息モノです〜。
いつもひっそり影から(でも心から)応援しておりますv
今回も素敵なお話をありがとうございましたー!